中学校2年生に薦めたい本100冊vol.5 8月

戦争という過去を知るために

戦後75年目となる今年の夏。
戦争を知る世代は少なくなりました。
私たちが戦争を正しく知り、
そして次の世代に
正しく伝えていくためには、
やはり本の力を
借りるよりほかありません。

いつも頼りになるのが
岩波ジュニア新書です。
戦争に関わるものの中で
お薦めの8冊を紹介します。

その1
「綾瀬はるか「戦争」を聞く」
 (TBSテレビ取材班編)

本書は、今をときめく
女優・綾瀬はるかさんが
戦争体験者の方々へ
取材を行った記録です。
TV番組の内容を
再構成したものと思われます。
高齢となられた方々の
悲惨な戦争体験に、
綾瀬さんが若者の代表として
真摯に接する姿に
心を動かされます。

その2
「戦争と沖縄」(池宮城秀意)

地上戦のあった国内唯一の地。
終戦後数年にわたる
米国の占領を経験した地。
土地を強制収容され、
基地が居座る地。
沖縄の戦争は
まだ終わっていないのです。
本書は沖縄戦を中心とし、
江戸時代の薩摩藩の圧政の時代と
戦後の占領時代を含め、
沖縄の歴史を詳らかにしています。

その3
「新版1945年8月6日」(伊東壮)

単に原爆の悲惨さや広島の惨状を
述べているだけではありません。
アメリカが原爆投下に踏み切った背景、
ナチスドイツとアメリカの開発競争、
ソ連参戦が与えた影響、
科学者の関わりと
原爆の大まかな原理等、
原爆が広島と長崎に
落とされるに至ったプロセスを
丁寧に説明しています。

その4
「15歳のナガサキ原爆」(渡辺浩)

長崎と戦争とのつながり、
そして8月9日その日の、
さまざまな場所での被爆体験が
克明に記録されています。
中学生としての著者の身辺での
悲惨な体験が、写真資料と相まって、
心に抉り込むように伝わってきます。
ぜひ手にとって
読んでいただきたいと思います。
そして身のまわりの子どもたちに
薦めてほしいと思います。

その5
「東京が燃えた日 戦争と中学生」
 (早乙女勝元)

東京大空襲の死者10万人は、
広島原爆による死者14万人、
長崎原爆による死者7万人と並び、
爆撃による
史上最大規模の大量虐殺です。
忘れ去っていいはずがありません。
本書は、その東京大空襲について、
さまざまな資料や
当時の人びとの手記を紹介し、
戦争を知らない私たちにも
その悲惨さが実感できるように
書かれたものです。

その6
「中学生の満州敗戦日記」(今井和也)

戦争が民間人にもたらした悲劇は
数々あります。
忘れてはいけないのが、
満州をはじめとする
「大陸に残された人々の悲劇」なのでは
ないでしょうか。
国が敗戦を受け入れる前に、
守ってくれるはずの軍隊は
いち早く遁走。その混乱の中で、
必死に生き抜こうとしたようすが
ひしひしと伝わってきます。

その7
「戦争の時代の子どもたち」
 (吉村文成)

子どもたちの学級日誌から
悲壮感がないか。それは
本文を読んでわかってきました。
子どもたちは戦争が正しいことも、
戦争に勝つことも、これっぽっちも
疑っていないからなのです。
「今年は大東亜戦争に勝つため、
 私たちの手で、
 増産に励みましょう。」
「冷たい水でも
 兵隊さんのことを思うと平気です。」

こんな文章が載っている
小学校の学級日誌、
恐ろしくなりませんか。

その8
「海に沈んだ対馬丸」(早乙女愛)

単に「疎開船が沈没しました」
ではない悲劇が、死者の数だけ
存在していたことに気付かされます。
戦争の真実の姿を一つ一つ検証し、
何が悪く、何が間違っていて、
誰にどのような責任があるのかを
総括していかなければ、
私たちの国はいつかまた
同じような過ちを
犯してしまうのではないかと
不安になります。

戦争に関わる一般的な本は、
主張が偏っていたり、
扇情的なものが少なくありません。
その上、専門用語が多く、
社会学や経済学の知識が
必要なものもあります。
正直にいうと、
私が読んでも理解が難しいものが
数多くあります(私の
理解力不足かも知れませんが)。

この8冊以外にも、
岩波ジュニア新書には、
太平洋戦争の戦禍・戦渦について、
テーマを絞って
わかりやすく丁寧に描かれている良書が
数多く出版されています。
機会を見て、これからも
紹介していきたいと思います。

(2020.7.15)

Steve BuissinneによるPixabayからの画像

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